訪問看護というと、高齢者向けや難病など重度の疾患で療養している成人をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
ですが、小児でも訪問看護を必要としているケースが多くあります。
こうした現状が認識されていないことを含め、小児の訪問看護には多くの課題があります。
小児における訪問看護の現状と課題について見ていきましょう。
医療ケアを必要とする小児の増加
現状の課題として、日常的に医療機器と医療ケアを必要とする小児が増加傾向にあります。
その理由の1つ目は医療ケアのニーズが高い小児が、病院のNICU(新生児集中治療室)から在宅療養に移行していることです。
2つ目は医療技術の進歩により、かつては救命が難しかった複雑な先天性心疾患、気管や食道、消化管の重度な先天異常を持つ小児が長期生存できるようになった一方で、生涯を通じて医療機器と医療ケアがなくては生存できないという理由です。
さらに3つ目として、従来より、自宅で暮らしていた重症心身障害児が成長し、年齢が高まるに従い、医療ケアが必要になっていく点も挙げられます。
歩行は不能でも、介助があれば自力で食事ができた重症心身障害児が、加齢に伴い身体機能が衰え、気管切開や経管栄養などの医療ケアを必要とするケースが増えてきました。
従来、こうしたケースは親だけで介護しているケースが多く見られましたが、親が高齢化し、介護が難しくなっている現状もあります。
高齢者の介護保険との大きな違い
高齢者においては介護保険制度により、必要なケアが受けられる環境が整備されてきました。
これに対して、小児の在宅医療は課題が多いのが現状です。
小児の場合、医療保険を基盤に障がい者総合支援法、児童福祉法によるサービスを複雑に組み合わせてサポートする必要がありますが、地域に対応できる人材が不足しており、必要とする医療ケアやサポートが行き届いていません。
成人の在宅医の場合、医療面では在宅診療医と訪問看護の連携が重要な役割を果たします。
また、介護面ではケアマネージャー(介護支援専門員)がプランの作成やコーディネートを行うという役割が明確となっており、ケアマネージャーへの報酬も保障されているので、介護サービスを適切に受けられる基盤が整っています。
これに対して、小児在宅医療においては、多職種のサポートが求められます。
ですが、小児在宅医療におけるケアマネージャーに相当する相談支援専門員の数は不足しており、報酬面での課題も多く、必要な連携が取れにくいのが現状です。
地域によっては、医療ケアを必要とする小児がいる認識が薄いのが現状です。
高齢者の看取り看護とは異なり、小児の場合、親が亡くなっても医療ケアが続いていくので、医療ケアの必要性について地域や社会がもっと理解を深めなくてはなりません。
まとめ

小児の訪問看護のニーズは増加傾向にありますが、すぐにサポートできる制度や体制に課題があり、必要な医療ケアやサポートが届かない現状があります。
今後、地域や社会の理解が深まることにより、改善される可能性があります。
以上、小児における訪問看護の現状と課題についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。